川西町役場
水を張った田んぼに浮かぶ町役場 ―風土を受け継ぎ 新しい未来をつくる―
置賜盆地の宿場町として交通の要所を支えた川西町は、西半分が山に覆われ、さらに西側には飯豊連峰がそびえています。山の尾根をなぞるように河川が流れ、道や集落は川に沿って並び、一帯には豊かな田園風景が広がっています。
県内有数の豪雪地帯として知られる川西町は、冬になると「飯豊おろし」という強い西風により、長年雪対策に悩まされていました。
町では既存役場の老朽化や耐震性能不足により移転改築計画が進められ、その移転先には線路をまたいだ東側の田んぼの一画が選定されました。役場と町民とが共に助け合いながら、地域文化を受け継ぎ、賑わいを生み出していくことが大切だと感じていました。そのためにも、役場の使い勝手だけで計画するのではなく、町民が気軽に立ち寄れる、まちの代表選手となり得る新しい地域交流拠点の創出を目指しました。
本計画では、風土と建築の関係性を読み解くことによる形態デザインの継承を試みています。「扇の間」により西風を受け流す勾配屋根や、風雪から建物を守る「かざらい格子」などの伝統的な構法を応用し、冬期間の雪対策に有効であることを数値解析により実証し、設計に反映しています。
また、田園地域に受け継がれてきた固有風景に調和した、やわらかな外観デザインにより、周囲に馴染み、親しみやすく愛着が持てるような役場としました。
風土性や文化性を感じられる役場とすることで、線路をはさんで「文化のまち」と「未来のまち」が共に成長していくことを想像しています。
田植えを終えた町民が、長靴を履いてトラクターで役場にやってくる。
そんな風景がいつまでも続くことを願っています。