手づくりの木の箱―地域のコミュニティハウス

庄司 和彦 (庄司和彦設計室)

今回は最近私がかかわった小さいけれど面白い仕事を紹介します。
これは東京世田谷にある地域の仲間たちのコミュニティハウスです。(規模は25坪ほど)
テニスを中心としたコミュニティを存続させるために同好の士が手づくりでプロデュースし、自ら運営するクラブです。そのための活動拠点としてデザインしました。いくつかの幸運な背景に恵まれた結果ではありますが、メンバーたちの熱意と想像力でつくったハウスといってよいでしょう。
皆でルールを決めて、飲み会、倶楽部パーティや会議など様々な活用ができるように考えました。
私はメンバーの1人でもあり、皆の希望を形にまとめて建築を実現する役割を担当しました。
まず一から自分たちでつくるので、建物工事費は極力安く抑えたいのです。
メンバーがいろいろ考えてみてたどり着いたのが、必要な機能を備えたリースのプレハブ建物です。普通、建設工事の現場事務所にするもので極めて安価です。
プレハブの限られた仕様と構法の中でプランニングを行い、床材だけは木目シートにしました。家具は皆で持ち寄りしたものとリサイクルショップから安く購入したものをコーディネート。

リースプレハブを倶楽部ハウスにする プレハブ+木格子+デッキテラス

そして建物前にはコートを臨む広いウッドデッキのテラスを設けました。
日差しをよける幅広のオーニングもあります。ハウスは一段上がっているのでデッキテラスからテニスコートへの視界は素晴らしいのです。ここでゲームを見ながら飲むビールは最高です。

テラスからの眺め このデッキテラスが中心空間

外観は現場仮設ハウスそのものですからこれをどうデザインするか考えました。
その結果、建物本体の周りはレッドシダーの角材(90×90)の格子で覆いました。
格子の材種として今回はこのレッドシダーの既製品が最も安価でしたが、地方ならその土地産の樹種を使えればさらにベターでしょう。
コストダウンを図るため部材を限定して大工さんの手だけにしています。
全体としてシンプルな木格子がデッキテラスに面して開くようなイメージとしました。

デッキへアプローチする 道路側はシンプルそのもの、格子は90×90@180

街並に対して、ごく地味ですがなにか存在感のある木の箱となりました。
道路側には倶楽部のメンバーたちによってトネリコの樹列が植えられましたが、将来はこの縦列が木の箱を覆って一体となり、周辺の景観に寄与するでしょう。
コミュニティの仲間に想像力とまとまりがあれば色々な可能性があるのです。
様々な工夫で標準的な新築ハウスよりもはるかにローコストで実現できました。
このような安価なプレハブ建物でも、美しく個性的に変身させることができる1つの例と思います。

2018-12-04T13:27:25+09:002012年3月9日|Tags: |
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