斎藤英二
河北町初の認定こども園「かほくあいこども園」は3つの輪(ふれあいの輪・見守りの輪・地域の輪)というコンセプトを柱とし、木造園舎が提案されました。平面的にも立面的にも不整形な形状の建物ですが、3つの輪からなる「ひとつながりの輪」というコンセプトなので、建物の構造はエキスパンションジョイントを設けた分棟型とはせず、一体として連続性を持たせる必要がありました。
設計当初、建物の構造形式は大断面集成材を用いたラーメン構造として平面プランを進めました。しかし、このような不整形な建物をラーメン構造として設計すると柱梁が大きくなり、コストが過大となります。また、大きすぎる断面の柱はこどもの空間スケールにありません。そこで、主要な間仕切り壁部分に筋違を設けた筋違構造として設計することにしました。地震荷重を負担する必要のなくなった柱や梁の断面は小さくなり、木材量を減らすことができました。
学校や保育園のような用途の建物においては、必然的に間仕切り壁が各所に配置されます。また、平面形状が円やコの字型、そしてこの建物のように囲むような形状であれば、各方向の壁量も自動的に確保することができます。
そう考えてはみたものの、純ラーメン構造として自由にプランニングされた平面内に十分な量の筋違を配置することは簡単ではありませんでした。しかし、意匠と構造で綿密な打合せを重ね、壁内に隠す筋違とデザインとして現わす筋違を明確に分類し、十分な筋違量を確保しています。十分な耐震性を確保したうえで囲み型プランの「輪」を実現させました。
隠す筋違と現わす筋違 | 間仕切り壁内の筋違 | 外壁内の筋違 |
建物の耐震性能としては、建物全体としてバランスよく筋違を配置し、主要なゾーンごとにおいても十分な壁量とすること、屋根面を垂木落とし込み+構造用合板によって固めることで十分な水平剛性を確保しています。建物の応力解析には任意系応力解析プログラムを用い、木材の剛性と筋違接合部剛性を適切に考慮して解析を行っています。
この建物では燃え代設計による準耐火構造とすることで木の架構を現わしています。また、準耐火構造とすることで、内装制限についても免除され、杉板貼りの壁面や木製ルーバー等の木のしつらえをふんだんに取り入れています。
解析モデル | 方杖架構と木のしつらえ (子育て支援センター) |
ふれあいモール |
敷地の地盤状況は非常に悪く、N値が0~8程度の砂層やシルト層が地盤面から15mほど続いています。また、建物の地盤面が周辺敷地地盤面から低くなっていたために70cm程度の盛り土を行う必要がありました。木造平屋建てとはいえ、6.5m×6.5mを基本グリットとしており、積雪深150cmの荷重も負担しなければならないため、建物の重量は構造物としては比較的大きくなります。地盤置き換え工法等を用いたフロート基礎の採用も考えましたが、盛土の影響でかなり深く根伐する必要があり、不経済となってしまいます。最終的には上部構造とは別に適切なグリット配置し、必要本数を最小限とした杭基礎を採用しました。非常にコストの厳しい建物であったので、基礎構造でのコスト減が必要不可欠であり、この建物の構造設計の勘所となりました。