前年度に行った耐力度調査の結果、本建物が近い将来の建替え計画があるものの、少なくとも1階の一部の柱については応急的にせん断補強を行ったほうがよいと判断した。そのため、施工性を考慮に入れて炭素繊維シート巻き工法による補強を山形市に提案し、採用された。炭素繊維シート巻き補強の事例は山形県では珍しく、今後の採用の口火を切ることになると思われる。柱のコンクリート圧縮強度を直接調べるために小径コア(直径25mm)によるソフトコアリング調査(圧縮強度試験)を実施している。
耐震診断業務においては建物の壁から供試体を採取してコンクリート圧縮強度を確認するのが一般的であるが、中には設計基準強度を大きく下回るものもあるので、建物を支える柱のコンクリート圧縮強度を直接知る必要が出てくる場合がある。しかし、柱には主筋やせん断補強筋が狭い間隔で配置されているために直径100mmコアを採取するのは困難な状況がある。そのため、小径のコアで調査ができるソフトコアリング調査法は、新築の建物も含めて今後幅広く採用されていくことと思われる。
袖壁つき柱の炭素繊維シート巻き補強(SR-CF工法)
モルタル仕上げ用メッシュシート貼り
ソフトコアリング紹介(ソフトコアリング協会提供)
ソフトコアリングによる小径コアと一般的な直径100mmコアの圧縮強度の相関性が設計者にとっては重要な要素であるが、上の図に示されたように相関性は良いようである。
「ソフトコアリング」は、(財)日本建築センターおよび(財)建築保全センターの「建築物等の保全技術・技術審査証明」(2000年4月27日付け)を取得している。