小さな偏心を有する免震建物の固有値解析結果に関する一考察(日本建築学会)  1997年9月

著者:吉田聡(フジタ)・石井勝・藤原薫(鈴木建築設計事務所)・鳥居次夫

免震建物は、1次並進および1次回転モードの固有値が非常に近接している場合が多く、固有値解析を行うと剛心と重心の偏心距離が小さくても並進とともに大きなねじれを伴う主要モードが現れることがある。本論文ではこの現象を解析的に説明し、固有値が近接している場合のモード合成法(ABS法、SRSS法、CQC法など)による最大応答値予測法に関して提案を行う。

[結論]
連成を考えない1次並進と一次回転モードの固有周期が近接した構造物を連成固有値解析した場合、一般の建物と異なって偏心距離が小さくとも非常に大きなねじれを伴うモードが現れる。しかし、これが偏心の影響が強いということには直結せず、時刻歴応答解析では近接したモード間の連成により、刺激関数に現れるほどの大きなねじれは現実には発生しない。
免震建物に見られるように各主要モードの固有周期が近接している場合、最大応答のねじれ性状は一般建物でよく採用されるSRSS法(二乗和平方)ではなくモードの単純和(CQC法により説明可能)により予測可能と思われる。

(注記)
この論文はある審査機関において、免震建物のねじれ性状を数値化するためにABS法またはSRSS法によって評価しようという誤った方針が出される動きがあり、それに対する反証としてまとめられたものである。大空間構造はビル構造物とは異なって近接したモードが多く存在し、CQC法(完全2次形式結合法 Complete Quadratic Combination Method)でなければ振動性状を正しく把握できないことをすでに知っていたため、反論することができたわけである。 大空間構造の振動性状は「熊本パークドーム」の設計において学ぶ機会があった。
過去に私が1軸偏心骨組に対する簡単な基本的展開を行っていたものを土台にして吉田君(現 アーバンエース)がより美しく整理したものである。私はもともと日本建築センターによる構造審査で数理的な質疑が出された時に、それらに答える資料を作成することも業務の一つであったが、この仕事はフジタ時代の最後となった思いで深いものである。

文責 藤原 薫

2018-11-29T17:05:12+09:001997年9月5日|
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